子どもというのはいろいろと言い間違いや言葉の覚え違いをするもので、うちの娘もいろいろと面白い間違いをやってくれていた。
最近ではゲゲゲの鬼太郎を「ゲゲゲのげたろう」とか、〇〇家(野比家とか磯野家とか)を「〇〇けん」と言ってラーメン屋みたいになっていたりとか。
そういうのはいちいち訂正するんだけど、(訂正しても「ちがうよー」と否定されることもあり)夫婦で気に入っていて、暗黙の了解であえてなおさずに静観しているものがあった。
それは「つくえ」を「くつえ」との言い間違い。
「くつえ」ってなんかそこはかとなく響きがかわいい。それでいて、なんとなく伝わる。食事の支度を手伝ってもらったりすると、「お皿、くつえにおいといたよー」と誇らしげに教えてくれたりする。
先日、家族で買い物から帰宅する途中の車内で、娘が幼稚園の教室のことを一生懸命説明してくれていた。
「あのね、くつえがね、よこに3つあって、うしろにも3つあって、だからくつえが全部9こあって、『はん(班)』も9まであるんだよ!」
ひさびさの「くつえ」連発ににこにこしながら、「そっかーすごいねー」と相槌を打って聞いていた私だったが、ある瞬間娘が、ふと我に返ったみたいになった。
娘「で、くつえがね」
娘「くつえがね………ん?くつえ??」
娘「くつえって…変だよね?つくえだよね?」
私は、あー、ついに気が付いちゃったかー。ていうか、こんな風に唐突に直るんだなー。と思いながら、娘の幼児期が終わりつつある一つの象徴のような気がして、何とも言えない寂しさを感じていた。妻も、「そうだねー。…そっかー、とうとうこれもなくなっちゃったかー」と、少し湿ったような、泣き笑いのような声で言っていたので、多分同じ気持ちだったのだと思う。娘は、そんな私たちの様子に戸惑っていたけれど。
娘ももう年長さん。ずっとパパママと一緒の時間は、残り少ないんだよなあ…。
その日の夜。夕食をとっていたとき、サラダのレタスをもりもり食べている妻を見て、娘がいった。
「ママは、べたすが大好きなんだねえ」
その瞬間、私と妻が(まだこれがあった!)とアイコンタクトして頷きあったことはいうまでもない。