ある夜、娘を風呂に入れようとしていたところ、
「実は…」と妻が切り出してきた。
「実は、肉じゃがにしょうゆを入れ忘れた!」
「だから味がない!」
結構なテンションで、半笑いのような表情で言ってきたので、自分も合わせる感じで対応した。
「まじで?どうやって食べたの?」
「塩でもかければいいかな?」
その場はそれで終わったのだが、娘の風呂と寝かしつけを終えて、いざ肉じゃがをいただこうかとしたところ、妻がぶち切れていた。
「あんなことを言う人だとわかっていたら、あなたを好きにならなかった」
「普通、ああいう時って、大丈夫だよっていうもんじゃないの?」
「それを、どうやって食べたの?塩でもかければいい?って、ありえない」
「だしとみりんの味はある」
「私も娘もそのまま食べたよ」
うーん…。確かに、言わんとすることはわかる。料理失敗したとき、大丈夫って言ってもらえると救われるし、ありがたいのは理解できる。自分だったら、塩でもしょうゆでもかけて少しでもおいしく食べてもらったほうがいいけど、全然いけるよ!って言って食べてもらったら、相手に感謝すると思う。
自分は正直、料理作ってもらったとき、味にこだわりないし、文句をいったことなんかない(逆に反応薄くて張り合いないと思う)。何も言われずにしょうゆなし肉じゃが食べても、なんか味薄いなと思いつつ普通に食べる。間違いなく。
もし、妻が「ごめん、今日料理失敗しちゃって」「味薄いけどごめんね」みたいな感じで言ってきたら、「へーきへーき!」「全然大丈夫だよ」と返したと思う。本当は、「いつも味付けばっちりなのに珍しいね、なにか心配事でもあったの?」とか付け加えたらさらにいいのかもしれないけど、これは多分ムリであろう。
でも、妻が「しょうゆ入れ忘れた!」「味がない!」って、効果音がドン!ドン!って聞こえる勢いだったので、こっちもつい勢いで返してしまった…。
自分にもコミュニケーションの面で非はあるが、反撃の攻撃力高すぎじゃないだろうか。個人的な感覚では、「ちょっとひどいよー」「ごめんごめん」くらいが適切なレベルだと思う。そもそも、私が料理したときには、妻は「味が薄い」「辛い」「しょっぱい」とかなり厳しいのだが。
そんなことを考えながら、だしとみりん味のジャガイモと共に夜は更けていった。